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だけど、俺が武器を貸した騎士さんが他の騎士たちを手で制した。
「剣を下げろ! あのスライムに危険は無い!」
「隊長! 何を根拠に…」
「それは我々自身だ」
「…どいういことですか?」
「全員自分の体を見ろ。盗賊との戦闘で負った傷がきれいに消えている」
その一言で騎士たちは自分の傷が消えていることにようやく気付いたが、警戒は解いていなかった。
「…はぁ。お前たち、命の恩人に剣を向けるとは何事か! 即刻剣を引け!!」
この一言で騎士たちは剣をようやく収め、隊長がこちらに歩みよってきた。
「私は王立騎士団護衛部門の隊長、メディルト=クラントという。あなたの名前を聞かせてほしい」
「名前ね~。あんただったらなんて呼ぶ?」
「私だったら…そうだな、アルと呼ばせてもらおう」
「アルか。なら、今度から俺はアルと名乗ろう。良い名前をありがとう、メディルト隊長」
「ねーねー、あなた、アルっていうの?」
「そうだよー、王女さま」
伸ばした手で優しく頭を撫でてあげると、ふにゃ~♪ って気持ちよさそうな声をあげてまた抱きついてきた。
気に入られたようです。
「ところで、この武器はいったい…」
といって、俺が貸した剣と盾を差し出すメディルトさん。
「その剣はフラムワイヴァーンの角と牙を合わせて造ったもので、盾もフラムワイヴァーンの甲殻と鱗を合わせて造ったものさ。剣の柄に魔晶石を組み込んでるから魔力を纏いやすい武器の出来上がりって訳さ」
「…そんなすごいものを何故私に?」
「あげた訳じゃないけどね? あの戦闘の間だけ貸しただけだから、返してもらうよ」
そういってメディルトさんが持ってた剣と盾を伸ばした手でつかみ、四次元空間へとしまった。
その時、おもちゃを取り上げられた子供のような表情をしたメディルトさん。
ちなみにメディルトさん、女性です。他の騎士たちと違って胸部鎧の形が異なってました。
「おっ、残りも治療終わった」
重傷だった騎士は気絶してたからゆっくりと地面に寝かしてやった。
治療が終わったから体の大きさもすっかり元通り。さっきまでは見下ろしてたけど、今じゃ逆にこっちが見上げてる大勢になってしまってる。
「それではまたいつか。さいならー」
そういって飛び跳ねながら晴樹の森にまた戻っていきました。
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