始動!商人スライム!

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 あっちで大人になるまで見届けられなかった妹の代わり…って訳でもないけど、せめてこっちでは、助けたこの子を最後まで守りたい。  ミトを優しく撫でながらそんなことを思ってると、不意にマスターがその両手に2つのカップを持ってやってきた。  無言で僕とお兄さんの前に置かれたそのカップの中身は、甘い香り漂うホットミルクだった。  「疲れた時は、それが一番ですよ」  マスターはそう言うと、踵を返してカウンターに戻ってった。  「…おいし」  一口飲んでみると、程よい甘さと温かさが体に染み込むような、それでいてどこか懐かしい味だった。  そのときの僕は、多分知らず知らずのうちに笑ってたんだろうな。お兄さんの顔が少し赤くなってたからさ。  まあ、自意識過剰かもしれないけどね。  「…は! そ、それではお話しに戻りましょう。竜車を牽く竜のお値段を聞いてきたってことは、竜車の購入を考えてのことだと思います。これから竜車を使うこととなり、尚且つギルドにも加入しないとなると、あなたの進む道は『商人』が一番近いですね。それに、あなたのその装備から鑑みると、そこそこの手練れと思います。商人というのは一番狙われやすい人種でしてね。盗賊等の被害が多いのが現状です」  「そうですね。私もここに来るまでに何度か盗賊と出会いました」  本当は一回しか遭遇してないけどね。  そんなことを思いつつ、お兄さんの話しに耳を傾ける僕。  「大抵の商人は馬車を使用していますが、盗賊によって馬車の足となる馬が最初に殺されます。それによって逃げ道を塞いで本命の品物に手を出す。…勿論、その商人は確実に殺されます。しかしあなたなら、盗賊が襲ってきても撃退できる力をお持ちだ。さらに、先ほど産まれた地竜と獣竜が加わることによって、より安全に商人をやっていけると私は思います。まあ、その二匹の成長を待ってですが…」  「まだ産まれたばかりのこの子たちを闘わせようとは思いませんよ」  膝で寝てる二匹を撫でると、嬉しそうな鳴き声をあげてくれた。  「そうですね。そこで、私から提案があります。その二匹が立派な成竜になるまでこちらから竜を貸し出す…というのはどうです? …と言っても、まずは竜車を決めていなければ、貸し出す竜も決められないのですがね」  「竜車はもう決めてたりするんです。中古ブースにあった金貨3枚と銀貨5枚の物です」 .
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