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四匹とも匂いを嗅いでからひと口かじる。すると、美味しかったのかどんどんパクついていく四匹。
僕はそれを見届けると、自分の料理を小皿に盛っていく。
「うん。美味し」
その後、物足りないとアルケールさんからの要望もあって、同じ量を二回作って持ってった。
一番好評だったのは卵焼きだった。嬉しいことこのうえない。
「ふいー、食った食った。久しぶりの人の食事も悪くねぇな」
「お粗末さまでした」
空き皿を台車へと片付けてると、残りの氷像が次々と割れていく。
「し、死ぬかとおもった…」
「…右におなじです」
「ぬう…」
「まさか、臨死体験するなんてね…」
みなさんが思い思いの感想を言い終わったところで、アルケールさんが爪楊枝片手にメレイトさんたちに近付いてく。
「ようおめーら。一足遅かったな」
「アルケールあんた、一番最初に氷から出たんなら助けなさいよ!」
「わり。飯食ってて忘れてたわ」
「道理でこの部屋にいい匂いが漂ってるわけです。…もしやあなたが?」
「俺がそんな酔狂なことする奴に思うか? 作ったのはこいつだよ。かなり美味かったぜ?」
「もうおかわりはできませんからね? アルケールさんのせいで買いだめした食料と厨房にあった食材、ほとんど使いきっちゃったんですからね? まあ、僕のレパートリー内の食材ばかりで助かりましたけど」
まさか多めに買っておいた肉類が全部無くなるとは思わなかったよ。よっぽど気に入ったらしくて唐揚げやトンカツなんかすぐに無くなるし、間に合わせで作った牛肉入り野菜炒めなんかもご飯と一緒におかわり連発して、結局米俵二俵も無くなったし。
やっぱり竜だからかな? 食べた量と体の体積が合わないよ。
軽く40~50人前は食べたんじゃない? 下手すればもっとかも…。
「それは食べたかったでござる…」
「わりぃな。全部俺の腹の中だ」
「それに、僕も精神的に疲れたのでこれ以上の調理はご遠慮願います。そろそろ弟妹たちを寝かしつけなきゃなりませんので。それでは失礼します」
「…ねぇメレ?」
「なんですか、シェルト」
「アルに謝ったほうが良くない?」
「…それは、そうなんですが…」
「近寄り難いね…」
「えぇ。もの凄く…」
「さてと、こんな大量な洗いものは初めてだねぇ。食器洗浄機をフル活用しても時間掛かるなぁ」
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