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ようやく墓に着いた
少しだけ光に慣れた気がした
父さんはずっと手を握ってくれていた“大丈夫、俺がついてる”と、父の手から伝わってきた
それがなかったらここまでこれなかったかもしれない
「母さん…」
父さんは花を替えて線香に火を付けたあと、懐かしそうに呟いた
父の最愛の人
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俺の母さんの記憶
7歳のとき
踏み切りの音と
人が崩れる音だった
家族で出かけた帰り
俺ははしゃいで二人を置いて先を走っていた
踏み切りで、線路に足が取られた
挟まって抜けないのだ
もがいていると踏み切りが降りる音と電車が来る音がした
さすがに慌てた俺は助けを求めた
だが、踏み切りの音でかき消される
俺の声に気づいたのは母さんだけだった
母さんは俺の足が抜けると踏み切りの外へ突き飛ばした
それと同時に
母さんが電車にひかれた
母さんが死んだのは俺のせいだった
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