七十三階の男

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「貴方はいつも一番に来ますね。そんなに楽しみですか?」 「そりゃそうさ。それにエレベーターの近くに住んでいる私が出迎えてやらずに誰が出迎えるというのか」 「助かりますよ。じゃあ、この人も……」 「ああ、任せてくれ。天使様も忙しいだろう? ささ、君、私についてきなさい。」 イトウと名乗った男は返事も待たずにスタスタと歩き出した。私はいいのか、と天使を見る。 「どうぞ。私の役目はここまでです。あとはあの人が必ず助けになってくれます。さ、待たせては悪いですよ」 イトウが手を振って呼んでいた。私は天使に一言お礼を言い、イトウのところへ向かった。 「まずはここを案内しよう。それから歓迎会だ。今日は忙しくなるぞ」    ガハハハと楽しそうに笑うイトウを見ると、私も少しだけわくわくした気持ちになる。天国も悪くはなさそうだ。  後ろでピンポーン、とエレベーターの扉が閉まる音がした
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