七十三階の男

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「おい、連れて行け」 「はい」 男の右隣に座っていた華やかで美しい天使が嬉しそうに返事をする。反対の左隣では汚く醜い悪魔が恨めしそうにこちらを見ていた。 「大王、このごろ判定が甘すぎやしませんかね」 「気のせいだろう。元々そちら側に行く死者は少ないからな。大人しく次のやつに期待しておけ」 悪魔の舌打ちを尻目に天使はこちらに歩み寄ってきて握手を求めてきた。 「おめでとうございます。天国は素晴らしいところですよ。ささ、こちらへ」 *   私は案内されている今でさえ、まだ現実感を持てないでいた。 もしかすると、これは夢なのでは? 本当は病院のベッドの上で治療を受けているのではないか?  人間が死んだあと、閻魔大王のところに行って裁きを受けるというのは、あくまで想像にすぎない。本当のところは誰にもわからないのだ。 確かめようがないのだから。
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