31人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうかしましたか?」
この天使にしたってそうだ。頭上には輪、纏う純白の布、彫刻みたいな無機質な微笑。美術館に足を運べば似たようなのがゴロゴロいることだろう。
「最初はみんなそんな風に思います。無理もありません。ですが、そんなに似ていますかねえ」
私は驚いて顔をあげた。
「でも、いくら人の想像に近かろうと、ここはれっきとした死後の世界です。戻ることはできないので、大人しくここで第二の人生を楽しんでくださいね」
眉ひとつ動かすことなくそう言い放った天使が、少しだけ怖かった。
*
「いや、いくらなんでもこれは……」
さすがに、ない。
「何か?」
「何かってあんた……」
目の前にあるのは、見覚えのあるボタン。(↑)と(↓)。視線を横にずらせば、開閉してくれそうなドアが。そしてドアの上には一から百までの数字がズラリ。
「これって、エレベーター……ですよね?」
「いかにも」
あっさりと認めてくれた。素直でいいヤツである。
最初のコメントを投稿しよう!