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「天国の最上階から地獄の最下層までわずか二十二分十八秒しかかかりません。近頃設置した最新式のエレベーターです」
困惑する私を気にもせず天使は(↑)のボタンを押す。ピンポーンという軽快な音と共にドアが開いた。
「さ、どうぞ」
促されるまま私はエレベーターに乗り込んだ。中は何の変哲もなく、逆に胡散臭さが倍増された。
「五十階を境に上が天国、下が地獄です。上の階ほど生前の行いがいいことになります。貴方は七十三階、普通のレベルですね」
天使がボタンを押すとウウゥンと唸りをあげ、体が浮き上がるような感覚に襲われた。死んでいるはずなのに不思議だ。それとも、単なる思い込みなのだろうか。
私はふと、あることを思い出した。
八年前に失った最愛。病で先立ってしまった妻。ここが死後の世界ならば、彼女はどこかにいるはず。私は天使に尋ねた。
「確かにその人はここに来ていますね」
「どこにいるんですか? 教えてください」
「それは構わないんですが、聞いてどうするんです?」
そんなこと、決まっているだろう。
「会いたいんです」
その言葉に、天使は優しく微笑んだ。
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