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「ダメです」
耳を疑った。
そんなことがあるものか。ここにいるのなら会えるはずだ。何の権限があってそんなことを言う。
冗談じゃない。
不満そうな私を見て、天使は諭すような口調で説明を始める。
「皆さん、考えることは大体同じなんですよね。両親に会いたいだとか、友達と話したいとか、奇特な人なら偉人に会わせろだとか。いや、まあ確かに気持ちはわかりますけど。ここの決まりには従って貰わないと困りますから」
「決まり?」
「最初に一人ひとりに決められた階から、上に行くことは許されないのです。あなたの妻は今七十四階で暮らしていますので、貴方が会いに行くことはできません。わかっていただけましたか?」
「そんな……たった一つ上なだけじゃないか! いいじゃないか、一目会うくらい!」
私は天使に詰め寄った。
「ダメなものはダメですって」
相変わらずの無機質な微笑み。それが余計に神経を逆なでする。気が付けば、天使の胸倉を捕まえていた。
「落ち着いて下さい。どうにもならないことですから、諦めて下さい。それと暴力はいけません。下層に送られますよ」
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