31人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうですか、天国は。お気に召されたでしょうか?」
「え。あ、ああ……」
あの浮かんでいる気球みたいなものは何だろう? それにいくつかの建物の上でグルグルと回っているのは……アンテナ? あの車はタイヤもないのになぜ走っているのだ?
「生きているときの世界とは違うので最初は戸惑うでしょうが、すぐに慣れますよ。なにせここは天国。みんな良い人ばかりです」
「その通り!」
不意に、一人の男が微笑みながら私の元へ歩み寄ってきた。
まるまると太っており、立派なあご髭をたくわえている。セイウチみたいだ、と思わず吹き出しそうになる。天使とは違って人間的な温かみが感じられた。
「新入りだね? 私はイトウだ。よろしく」
握手。腕が上下に激しく振られた。
最初のコメントを投稿しよう!