第五章 正邪の天秤

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 カムイは仕方なく、それが最良の判断だと思うことにした。  しかし、カムイの前に長剣が延びる。 「駄目だ。お前も戦うな。アレは元の住家に帰す」  剣を向けながら、ガルンはまるでモンスターを庇うようにカムイの前に立ちはだかった。 「本気かよ?」 「本気だ」  カムイの言葉にガルンは即答した。  声は鉄である。  長剣の刃先にも微塵の揺らぎも感じない。  本気で一戦やらかす覚悟のようだ。  二人の視線がまじまじと交差する。  ガルンは自身のチャクラを二つまで完全開放した。  カムイは侮りがたい敵だと既に気がついている。  やるなら本気だと直感が囁く。  それはカムイも同様だったようで、長剣の間合いから無意識に飛びのいていた。  後退してからカムイは苦笑する。  手は汗で濡れていた。  本気でやらなければ死ぬ相手だと、本能が告げているようだ。 「分かった、分かった、降参だ。この試合自体降りよう。金はおしいけどな」  カムイは肩竦めると両手を上げた。  文字通りお手上げの合図だ。  カムイはガルンの予想通り拳闘士だった。  気を操る気法拳士。  内気功を練る気法使いはチャクラが一般人より開眼しやすい。
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