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「貴方達に言う事は一つ! 盗賊を辞めて、この島を去って、真っ当に生きてください! 以上です!」
エッヘンと何故か胸を張るカナンを、盗賊達は静かに見守っていたが、少し経ってから全員が大笑いを始めた。
心底受けたのかガダラは腹を抱えて涙目になっている。
「ナイスジョークだ嬢ちゃん! お前が情報屋が言っていたガキの連れだな? ベタな手だが人質にでもなってくれや?」
「嫌です。何の人質ですか?」
「何のってお前の連れ用に決まってんだろが?」
横からゴロツキが手を伸ばす。その手を払うのではなく、カナンは握りにいった。
まるで握手を求めるファンの相手をする有名人の用に。
掴んだのは相手の小指だけだが。
「?!」
小指に掛かる負荷の痛みと、綺麗な足払い。
まるで男は自分からとびこむように、地面に前方宙返りして倒れた。
背中を痛打してのたうちまわる。
「何を言っているか分からないかな? 私は警告したよ。ガルンが来たら、貴方達は皆殺しに遭うよ。そうなる前に逃げよう!」
心底心配してるのか、真剣な眼差しには純粋な光りが見える。
ギュレーが不愉快そうに顔を歪めた。
この少女は本気で自分達を心配しているのだ。
狩られる対象として憐れんでいる。
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