165人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんな気配はないな。あれは気法戦士に近いが……。武道家ではない」
「拳闘じゃない? めちゃくちゃスゲーぞ、あの嬢ちゃん。素手でアレだけやれる奴は、そうはいないぜ?」
ギュレーの指摘にガダラは異議を唱える。
「いや、あの体捌きは拳闘士では無い。踏み込みも間合いも甘い。始めの合気の動きも、本物ならば足払いは必要としないはずだ。あの動きは……剣士のそれだ」
「はあっ? 意味が分からんな。剣士なら何故剣を使わない?」
ガダラの疑問も尤もだ。
剣士が剣を使わないのでは、宝の持ち腐れである。
実際、カナンは帯刀はしていた。
巫女服の中に懐刀を忍ばせている。
だが、短刀では滅陽神の剣技は真価を発揮できない。
不自然と言えば不自然である。
「そんなもんはどうでもいい~。取り敢えず、あの小娘、砂にするぞ」
ダラックは首をゴキゴキ鳴らすと、懐から筆箱程の箱を取り出した。
外箱を投げ捨てると、手には注射器が残る。
その注射器を何の躊躇いもなく、自分の首の頸動脈に打ち込む。
「ああAAa~!!!」
身体が小刻みに震え、地面に着くほど体を後に反り返した。
獣の様な雄叫びが後に続く。
「うわっ、本気だよ、このオッサン。まあ、本気ださないとヤバイか」
ガダラは自嘲するように顔を歪めて苦笑した。
最初のコメントを投稿しよう!