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第五章 正邪の天秤 #2
出て来た男達を少女――カナンはマジマジと眺めた。
父から又聞きしたガルンの、復讐すべき相手の風貌によく似ている。
一人ならともかく、三人そろえばほぼ間違いはないだろう。
「何のツモりだてめぇ? どぎつい趣味のペドにでも売るぞゴォラ?」
ダラックの恫喝をカナンは意に介した風もなく、涼し気に聞き流しながら、回りを値踏みするように見渡した。
ゴロツキのような恰好の者が四人。
メイルアーマー等で武装した傭兵らしき人間が三人。
奥にローブを纏った魔術師らしき人物が一人。
そして、目の前にメインデッシュが三人。
おまけで、下に延びている人間が一人。
勿論、チャクラ開放者はゼロだ。
プラーナの流れを見ても気を使う能力者もいない。
(問題は数かな……)
う~んとカナンは唸った。最悪のケースを考えて立ち振る舞うのは、グラハトにみっちり教えられた事柄の一つだ。
カナンが心配しているのは、“手加減出来ずに殺してしまう”可能性一点だけである。
闇側の戦士だった父親の娘とは思えない博愛振りだ。
それがカナンの油断に繋がるのだが、楽天的で前向きな彼女はそんな事を全く気にしていなかった。
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