第六章 連鎖する悪夢 #2

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「ガルンはさ……。簡単に人を殺せるよね……。動物とかには優しいのに」 カナンの声のトーンが下がった。 何か酷く痛々しい思いが伝わってくる。 「……?敵だろ。自分の命を狙うなら、相手も殺されるのは道理だ。前も言っていたけどカナンは博愛主義過ぎるよ」 心底分からないと言うようにガルンは疑問を述べる。 カナンは淋しそうな笑みを浮かべた。 背中越しのガルンにはその表情は分からない。 「……私は初めて人を殺しちゃったよ。凄く怖くて恐くて恐ろしくて、自分でもよく分からないかな……」 カナンの体が震えている事にガルンは気がついた。 カナンを抱き抱えてから何回も震えがあった。体調不良から、体温低下の寒気等で震えていたと思っていたが違っていたらしい。 カナンが手を汚した責任は自分にある。と、ガルンは心で悔やむ。 己の力の無さを。 ガルンはカナンの頭を器用にポンポンと叩いた。 カナンが不思議そうにガルンの横顔を見つめる。 「俺はさ、村を襲われ死にかけたせいか、どっか頭が壊れた見たいだ。自分が憎いと思った奴は殺したくなる。そいつを殺さなければ次は自分が殺される。そして、次は自分の親しい人間。いや、俺より先に、近しい人間が殺されるような気がするんだ……だから、駄目だ。何故か“人間は悪性に見えてしまう”」
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