第六章 連鎖する悪夢 #2

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ガルンの言葉にカナンは沈黙した。 ガルンの人生を考えると口が出しづらくなる。 それでも人の命は尊いモノだと伝えたい。 皆、初めは同じ儚い命。 統べからず全ては等価値だ。 人生と言う名の服によって、人は自らを着飾るが、それだけが全てでは無い。 また、新たな服を着ることも可能なのだ。 それによっては人は新たな生を得る事が出来る。 馴染んだ服を脱ぎ捨てるのは簡単なようで、簡単ではない。 それでも、元は貴賎の無い命。やり直す機会と慈悲は必要だとカナンは考えていた。 グラハトに乳臭いガキの戯言と一笑に伏された事を思い出すが、それが自分の考えだと反論した事も思い出した。 どうして、こんな餓鬼に育ったんだと?グラハトが不思議がったのは仕方が無い。 ただ一つ気になることを彼女の父親が言っていたのを思い出す。 「人間の価値は皆、元は平等でも、“その後”の価値は違う。……いや、そもそも元の人間の価値がただの“実験動物”並だったらどう思う?」 グラハトの言葉に幼いカナンは拗ねた顔をした。 言っている意味が分からない。 「面白い話をしよう。別世界からこの世界に紛れ近で来た、神信教典・旧伝の話だ」
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