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「次の審問官が控えています。そろそろ本題に入らないと、またクレームが来ますよ?」
「あらあら、もうそんな時間?」
慌てる樽神官を冷ややかに見つめてから、止めるならもっと早く止めろよと、ガルンは書記官を目で訴える。
そんなガルンの視線を無視して、書記官はどこ吹く風で書類の側面をコンコン机に当ててズレを直していた。
「スケジュールが詰まっています。次の合同会議まで時間がありません。これで審問は終わりです」
「はあ?!」
唖然とするガルンを無視して二人はいそいそと退室準備を進める。
「と、言うか質問してないよな?」
「貴方はミミルク様の有り難い高説を、心酔する様に聞いていました。それを、貴方が悔い改めて何も言えない程感銘を受けたことに“しておきます”」
書記官はニッコリ笑って、樽神官を煽って出て行った。
扉の向こうから、樽神官の「次はちゃんとお話するから~」と言う、微妙な捨て台詞が聞こえた気がしたが、ガルンはあえて聞こえない振りをした。
(……何なんだコイツらは)
完全に毒気が抜かれたガルンは円台に体を預けると腰を落とした。
そこに、ドアを蹴破るような勢いで男が入って来た。
いきなりの侵入者にガルンは呆気に取られる。
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