第八章 浸蝕する希望 #2

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第八章 浸蝕する希望 #2

鎖が擦れる金属音が響いた。 眼を凝らすと人が壁に鎖で吊されているのが見える。 「カナン?」 その言葉に人影はピクリと反応した。 「ガルン……?」 蚊の鳴くような声が響く。 「ガルンは……大丈夫かな?酷い事されて……ないかな。よく“見えないから”心配だよ」 少女は何時ものように微笑んだようだが、腫れ上がり過ぎた血まみれの顔では表情が見て取れなかった。 “原形”を留めていない。 見えないのは当然だ。両目はとうに潰されていた。 体のあちこちも欠けている。 ガルンはカナンの姿を見て絶句した。 その凄惨な拷問跡は、筆舌に尽くし難い。 心の底からどす黒い感情が噴き上がる。 「マズイ……」 と、呟いたのは廊下にいた無名と呼ばれた少年だった。 背中の大剣をスラリと抜く。 表情に緊張の色が出ている。 「何がだ?」 緊迫した無名の様子にラインフォートは顔を向ける。 牢獄から獣の咆哮のような絶叫が溢れ出した。 聞いた者の耳に残る、痛切な慟哭。 「これは……ちょっとヤバイかもね」 フィン・アビスが珍しく余裕の無い表情で構えた。 それを見てラインフォートの表情がこばわる。 「何だと言うんだ?!」 ヒステリックに騒ぐ男を面倒臭そうに横目で見てから、フィン・アビスは打算的な笑みを浮かべた。 「団長は、このようなケースの事前策は何か用意してあるんでしょうか?」
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