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第十章 忌み子の姫 壱詞 #2
竜語魔術と気法の合わせ掛けの威力は絶大のようだ。
砕けた蜘蛛がダイヤモンドダストさながらに宙に舞い散る。
「……完全回復したのか!! メルテシオンの神降ろしの姫、人柱にするには惜しい才能だ」
クロックワードは驚愕の視線をパリキスに注ぐ。
白き銀嶺の存在など歯牙にも入れていないようだ。
「貴君は姫君の所まで下がれ、姫君の神聖魔法ならその程度の怪我など一瞬で治してくれる」
前に出る竜人の後で、ガルンは何とか立ち上がった。
「あの魔人共……妙な眼力を持っている。あれは一人で戦うのは無理だ」
ガルンは魔剣を足元に刺すと、無理矢理右腕で外れた左肩を嵌め込む。激痛が脳を焼くが、耐えられない痛みでは無い。
その様子を見ずに竜人は回りを気にしながら答える。
「あれは……“魔眼”だろう」
「魔眼?」
「イービル・アイ……邪眼の一種だな。それもあれはかなり高位の力だ。視界に入るだけで能力が発動する極めて危険なレベルだろう」
ガルンは魔剣を拾い上げると深呼吸をした。
二人の魔人は対角に位置したポジションを変えずにいる。
その双眸からは禍々しい黒い光が洩れ出していた。
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