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第十章 忌み子の姫 弐詞 #2
沈黙するガルンを見て、ゼロは視線を外した。
「まあいい。姫の役に立つのなら、人間だろうが化け物だろうが、こだわりはしない」
きっぱり言い切るのを確認してから、
「談話中、申し訳ないが、お出迎えだ」
とアカイが呟いた。
「分かっている!」
と二人が同時に答える。意外と息は合っているようだ。
二人とも新たな敵の出現には気付いていたらしく、直ぐに足を止める。
正面通路の影から、にょっと人影が生えてきた。
黒い人型の靄の顔に、爛々と輝く黄色い光る瞳がスペクターを連想する。
それが三体。
黒い人型がゆっくり動き出す。
気も魔力も意思すらも感じない。
生命の息吹が何も存在しないリビングデッドのようだ。
「なんだコイツは? レッド・インパルスを使ったが、微弱なリアクションもないぞ?」
アカイはいつの間にか能力を使っていたらしい。だが、対人用の能力もこの不気味なモンスターには効果がなかったようだ。
ガルンが無造作にダークブレイズを振りかぶる。
陽炎のように炎が立ち上がると、躊躇無く魔炎弾を撃ち放った。
しかし、魔炎は黒い人型に当たると、あっさりとその身体を擦り抜けてしまう。
魔弾はそのまま通路の奥に飛んで行き、闇の奥で花火の用に散る光を放って消え去った。
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