第十章 忌み子の姫 弐詞 #2

1/11
122人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ

第十章 忌み子の姫 弐詞 #2

沈黙するガルンを見て、ゼロは視線を外した。 「まあいい。姫の役に立つのなら、人間だろうが化け物だろうが、こだわりはしない」 きっぱり言い切るのを確認してから、 「談話中、申し訳ないが、お出迎えだ」 とアカイが呟いた。 「分かっている!」 と二人が同時に答える。意外と息は合っているようだ。 二人とも新たな敵の出現には気付いていたらしく、直ぐに足を止める。 正面通路の影から、にょっと人影が生えてきた。 黒い人型の靄の顔に、爛々と輝く黄色い光る瞳がスペクターを連想する。 それが三体。 黒い人型がゆっくり動き出す。 気も魔力も意思すらも感じない。 生命の息吹が何も存在しないリビングデッドのようだ。 「なんだコイツは? レッド・インパルスを使ったが、微弱なリアクションもないぞ?」 アカイはいつの間にか能力を使っていたらしい。だが、対人用の能力もこの不気味なモンスターには効果がなかったようだ。 ガルンが無造作にダークブレイズを振りかぶる。 陽炎のように炎が立ち上がると、躊躇無く魔炎弾を撃ち放った。 しかし、魔炎は黒い人型に当たると、あっさりとその身体を擦り抜けてしまう。 魔弾はそのまま通路の奥に飛んで行き、闇の奥で花火の用に散る光を放って消え去った。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!