第十一章 憎悪の灯と祈りの調べ #2

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「外交……? そう言えば白き銀嶺は“大いなる災い”が近づいていると言っていたよな? それを国々に知らせる旅をしていると」 「その通りだ。ちょうどいい。ライトエルフにも伝えたかったのだ」 白き銀嶺の視線を、ヒュペリアは空中に視線を泳がしてかわす。 違和感を感じたが白き銀嶺は語り出した。 「竜王公国テンスの一竜、天龍帝トラウ・ヴァルが神託を受け申した。それはこの世界に三つ現れる禍の予言。その一つがこの西方大陸に現れると言われている」 「禍?」 「三つの禍は、全て外界より来たる悪意の存在との事だ」 白き銀嶺以外の三人は渋い顔をした。抽象的過ぎる。 「チープに言えば、別世界からの侵略者って言う事か?」 ガルンの言葉に白き銀嶺は頷いた。 幽境の迷い人を思い出す。 明らかに平行世界――別世界は存在しているのだ。 「一つの禍だけは完全に判明している。起こる場所は我が祖国、竜王公国の存在する北方大陸だ」 「判明しているなら、先に禍の目を潰せばいいんじゃないのかな?」 カナンの意見は単純明快だ。 予防しておく事に損は無い。 白き銀嶺は少し苦渋に満ちた表情を浮かべた。 「それは……無謀だ。禍の一つは彼の竜王たちに封印された、“冥鬼竜クオンカーナム”と予見されている」
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