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第十二章 凍れる雨夜の星 #2
「この身体は私の甘さが招いた罰。それには何の怨みも無いよ。そんなものには何の怨みも無い」
少し俯いたカナンは瞼を閉じた。
「憎しみは別。あんな身体になった私の為に、ガルンは何度も何度も死線を越える事になった。何度も何度も。そのせいでガルンの存在の歪みはどんどん酷くなる。それを強いたのは貴方だよね?」
「それは奴が勝手に選択した事だ」
「勝手……?」
カナンは薄く笑った。
綺麗な笑顔なのに、背筋が凍りつくような殺気が纏わり付く。
ラインフォートは生唾を飲み込んだ。
カナンの冷ややかな瞳が開く。
「私はそんなに馬鹿じゃないよ? それに、あの塔では“耳は潰されていなかった”。あの時の会話は聴いていたんだよ?」
「……わざと治療を遅れる様に仕向けていた事も知っていそうだな?」
「知っているよ。親切な赤毛の騎士が教えてくれたから。だからこそ私は貴方を許せないよ。許せないかな?」
ラインフォートは歯軋りした。少なくとも内通者がいるのは確定だ。
そいつのせいで今の局面があると言える。
「一回だけチャンスを上げる」
唐突なカナンの言葉にラインフォートは目を細めた。
「私に攻撃していいよ? それで私が倒れたら、貴方は生きる運命だったと諦める。でも、倒せなかったら……諦めて死んで欲しいかな?」
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