第十三章 王宮の騎士

6/27
前へ
/35ページ
次へ
「それに、カナンには白き銀嶺の手伝いをしてやって欲しい。強いと言っても単身だからな。やばい地域や種族もいるはずだ」 「……」 「白き銀嶺に協力するって約束したろ?」 その言葉でカナンはようやく観念した。 相変わらずカナンの過保護ぶりは変わらないと、ガルンは顔をほころばす。 「まあ、ガルンが試験に受かるとも限らないしね」 ヒュペリアが人が悪そうにニヤリと笑う。 「確かに、その可能性も捨て切れないもんね」 何故かカナンも嬉しそうに同意する。 「やれやれ……」 ガルンは呆れつつ、肩を竦めて小さく首を左右に振った。 するとカナンがするりとガルンの顔元に寄ってくると、小声で呟いた。 「天翼騎士団の動向って、親父の敵討ちじゃないよね?」 カナンの言葉に鼓動が跳ね上がる。 「この国を出て、故郷に戻るとしたら障害になる可能性がある。それを見極めるためだよ」 引き攣って答える。 グラハトの怨恨は、心の底で燻っているのは事実だ。 しかし、正面から戦えば、本当に国との戦いに成り兼ねない。 グラハトとの約束を優先するならば、これ以上カナンを巻き込む事態は避けたいのが本音だ。 今は復讐よりグラハトと白き銀嶺、そしてパリキスへの誓いと約束が優先だと判断する。 ガルンは燻る殺意に静に蓋をしたのだ。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

135人が本棚に入れています
本棚に追加