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広大な大聖堂にいるようで、ガルンには居心地が悪い。
長い渡り廊下を歩いている時だった、体を突き刺すような殺気を感じたのは。
ガルンは無意識にダークブレイズに手をかけていた。
(知っているぞ。この殺意!)
振り向く先に、見覚えがある二つの影が歩いている。
太陽と月のような強烈な存在の光。
閉じたばかりの心の蓋から、殺意の炎が漏れ出すような高揚感。
「本当にあの時の、闇の残りカスがまだ生きていたとはな」
冷淡な口調で、天翼騎士団の副団長クライハルトはそう呟いた。
無言で横に立つのは天翼騎士団団長アルダークだ。
ガルンの唇が釣り上がる。
憎むべき怨敵が目の前に現れたのだ。
カナンの治療を理由に、閉じ込めていた怒りが沸々と甦る。
「のこのこと、そっちから死にに来るとはな」
「黙れ塵芥。生かされた命を棄てる気か?」
「うるせぇぞ小烏? 自慢の八枚羽根をむしり取ってやるぜ!」
睨み合う二人に緊張が走る。
クライハルトの手が、腰に下げた天獄剣に掛かる。
そこでアルダークが二人の間に割って入った。
「止めろ二人とも。ここは王宮内だ。場所を弁えよ!」
雄々しい声が通路に響き渡る。
しかし、ガルンとクライハルトは剣を手にしたままだ。
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