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「クライハルト。彼は既に免罪符で罪を償っている。これ以上はただの私闘だ。それに、ガルン・ヴァーミリオン、貴様も何しに此処へ来た。そこまで分別のつかないガキではあるまい? それに……」
アルダークはチラリと背後を見た。
後方に白い鎧に白いマントが見える。
首には天秤に籠……王宮近衛騎士団の紋章だ。
「王宮内での抜刀は、それだけで十二神教への武力介入と判断される。王宮近衛騎士団が黙ってはいないぞ」
睨み合う二人も、回りに現れた気配に気がついていた。
ここでの戦闘は、王宮近衛騎士団を敵に回す行為に等しい。
二人は舌打ちして武器から手を離す。
「いつか、きっちりケリをつけるぞ」
「飼い殺されていた方がマシだったと、後で後悔させてくれる」
「あの……」
睨み合う二人に、案内人の女性が怖ず怖ずと声をかける。
「行くぞ!」
ガルンは吐き捨てるように呟くと、案内人を置き去りにして歩き出した。
案内人はアルダーク達に一礼すると、その後を急いで追い掛ける。
クライハルトは射るような瞳で、ガルンを見続けた。
「よもや、あのような痴れ者が王宮近衛騎士になど受かりはしないですよね?」
「……それを決めるのは我々では無い」
アルダークは含みのある視線で、ガルンの背中を見送った。
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