135人が本棚に入れています
本棚に追加
通路を進みながらガルンは拳を握りしめた。
(落ち着け。今はどのみち無理だ。同時にあれだけの戦力とは流石に戦えない)
ゆっくりと深呼吸をすると、ガルンは真横をチラリと見る。
「あのまま戦っていたら、“あんたも”介入して来るよな?」
ガルンの言葉を、案内人の女性は不思議そうに聞いた。
回りには誰もいない。
ガルンは真横を見据えたままだ。
「マジかよ。やっぱりお前、見えているようだな? 意味わかんねぇーな」
何も無い空間から声がする。
ガルンが一度瞬きをすると、そこには白い騎士が立っていた。襟首には天秤と籠の紋章がある。
紫色の短髪の下に、ニヒルな笑顔が張り付いている。年は三十頭辺りだろうか。
「お前、半年前、城壁の上でも俺の能力に気がついていたよな? パリキス姫と会っていた時だ」
「あんたが妙なカモフラージュ術を使っていたのか? あの時、あの場に六人は別の人間がいたよな?」
紫髪は目を丸くしてガルンを見つめた。
ガルンは身じろぎもしない。
逆に案内人が挙動不審になり始めた。
「あの……、えっと、誰とお話になっているんでしょうか?」
女性は気味が悪そうに辺りを見直した。“ガルン以外誰もいない”。
ガルンは案内人を無視する事に決めた。
最初のコメントを投稿しよう!