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ラインフォートは躊躇した。
この少女の行動は微妙に抜けている。
相手に情報を開示し、あまつさえ攻撃チャンスを与えると言うのだ。
正気の沙汰とは思えない。
だが、この馬鹿正直な少女なら十分有り得る事だ。
(まあいい。倒せなかったら逃げればいいだけだ)
ラインフォートは鼻で小さく笑った。
「良いだろう。その話にのってやろう」
そう言うと素早く服から
赤い短刀を取り出した。
エノク文字が刻まれた、不可思議なオーラを放つ小振りのフランベルジュだ。
それを見てカナンの表情が強張った。
誰が見ても異質なのは手に取るように分かる。
ラインフォートは邪悪に笑う。
「これは、天翼騎士団が持つ天獄剣のレプリカだ。中に高位存在を封獄して使役する力を持つ。これには天使はいないが……ある魔性が封獄してある」
フランベルジュから淡い白い光りが漏れる。
曲剣の上で素早く印を結ぶと、剣に刻まれた文字が光り出した。
「この中には、月喰いの魔女ハティ・ヴァ――……?」
そこでラインフォートは言葉を止めた。
フランベルジュが無い。
いや剣どころか、構えた両手が消えていた。
「……?」
不思議そうに無くなった両手を眺める。
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