第十三章 王宮の騎士

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「俺の“虚偽認識”は相手の五感全ての知覚能力を奪う。そこのレディが良い例さ。彼女は俺を認識出来ない」 「彼女にはお前が見えない?」 「違うな。見えているが認識出来ないが正解さ。現に彼女は声も認識出来ていない。しかし、今までこの能力を一発で完全に破った奴はいなかったんだがな……何なんだお前は?」 「さぁ……ね」 ガルンは微妙に視線を逸らした。 実際、紫髪の能力『ディスガイズド・レコグニション』は王宮近衛騎士なだけあって完璧なレベルだ。ガルンの五感では何も察知出来ない。匂いも気配も認識出来ないのだ。 だが、ガルンには精霊の眼がある。 精霊界側の存在の光を知覚する行為は、この世界の認識法則とは異なるのだ。 別世界の視覚が無い人間には理解出来ない知覚手段と言えよう。 見破る事が出来たのは、精霊の眼での索敵癖のなせる技であった。 そのやり取りを、怪訝な目で見つめる案内人。 彼女には、ガルンの独り言にしか見えないのだから仕方が無い。 「俺は気にしないで案内してくれ」 ガルンは案内人を促すと歩みを再開した。 「あんたは見張りか?」 「いや、お守りさ。副団長に言われてね。お前はこの国の人間じゃないから、試験の仕組みがわからないだろうからってな」
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