第十三章 王宮の騎士

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(あの吸血鬼……。姫さんに俺が試験を受けるのを報告したいが為だけに、無理矢理試験日にした感があるな) 額を手で押さえて溜息をつく。 「試験内容は単純だ。現役の王宮近衛騎士と戦う。それだけだ」 「へぇー。分かりやすくていいな。ぶっ倒せばオッケーって事だろ?」 「まあ……。そんなものだ」 ふてぶてしいガルンの態度に、紫髪は少々驚いた。 試験は戦いの姿勢と能力を見せる事がメインであり、勝敗は関係ない。 そもそも現役フル装備の王宮近衛騎士と戦って、勝てる者などそうそう存在する訳がないのだ。 「合格の是非は単純だ。それを判定する王宮近衛騎士十名の内、七名が認めるか、王が認めた場合のみ合格となる」 今度はガルンが驚く番だった。 メルテシオンの現王を今まで一度も見たことが無い。 それが観覧に来るのだ。 「何だか仰々しいな」 「それだけ選別は重要って事だな。十二神教徒の権威も受けない数少ない行事だ。それに、この機に王暗殺を狙う無謀なアホとか釣れた事もある。面白いイベントだぜ?」 「楽しませて貰うよ」 ガルンは不敵に笑う。 特に虚勢を張った様にも見えない。 自然体は自信の現れか、無謀な楽観主義か。 紫髪は面白い奴が来たと、隠しもせずに心底ほくそ笑んだ。
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