第十二章 凍れる雨夜の星 #2

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空気を裂く妙な音が響く。蝶白夢から伸びる水刃が戻る音だ。 「あっ……?」 ラインフォートはゆっくりと足元に転がる、自らの両手を見た。 フランベルジュもその手の中にある。 唐突に傷口から血が噴き出した。それと共に痛みがじわりと広がる。 絶叫がオレンジ色の幻想 空間に響き渡った。 「権力者の悪い癖かな? 癖なのかな? 自分が優位と判断すると、より多くの利益を欲しようとする。だから隙が生まれる」 カナンは冷淡な表情で淡々と語る。 「ぎっ、ぎざまああ!! 謀ったな!」 ラインフォートは顔面蒼白で雄叫びを上げた。 足元に血の池が広がっていく。この出血量では数分と命は持たないだろう。 「貴方の余裕は、何か切り札があるから……さっきの挙動から、それはそ の指にはめてあった指輪だよね? 凄い魔力量がある」 「……!! 貴様、魔術師だったのか?」 ラインフォートの言葉にカナンは首を傾げた。 「私はただの剣士だよ?ただチャクラのお陰で魔力をエーテルラインで感知出来る。ガルンも魔導都市とやらで見えるようになったって言ってたかな? 」 「……!!」 ラインフォートは半年近く前に、ガルンに魔喰教典と呼ばれる魔動書を奪取する任務を与えた事を思い出した。
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