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ラインフォートが裏でかなりあくどい事をしてきたのは誰でも察しがつく。
狙われる理由はごまんとあるだろう。
しかし、それを容易に行う戦力はそうそうあるとは思えない。
ガルンは軽い安堵と喪失感に戸惑いを覚えた。
誓いの一つは、こうしてあっさり失ったのだった。
それから半日後。
夕暮れが、辺りを朱く染めている時間帯にガルンはティリティース邸に着いた。
庭では軽く蝶白夢を振るうカナンがいる。
「任務ご苦労様!」
「ああ……」
明るく迎える姿を、ガルンは歯切れの悪い返事で返した。
カナンが首を傾げる。
「何かあったのかな? あったりしたのかな?」
「いや……たいした事じゃ無い。それより置いて行った妖刀はどんな感じだ?」
ガルンはカナンの手に視線を移した。
蝶白夢はカナンの頼みと、任務の兼合いでティリティース邸に置いていったのだ。
今回のガルンの任務先は大河であり、相手は水属性の眷属だった。
同じ水属性の武器は相性が悪い。
そして、カナンがダークブレイズのような精神喰いの魔剣を振るうリハビリにと、刀を貸してくれと頼んで来たからであった。
その刀がラインフォートの血を吸ったとは、ガルンは露ほども思ってはいない。
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