第十二章 凍れる雨夜の星 #2

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「う~ん。やっぱり病み上がりで精神力を吸われ続けるのは、ちょっときついかな~? 刀自体の使い勝手はいいけどね。とりあえずティリティースの宝物庫から、何か新しい剣を探して見ようかな?」 そう言うとカナンは刀の切っ先をくるくると回した。 水泡が溢れ出し、夕焼けを映して空に舞う。 シャボン玉のように飛ぶ泡から蝶が生まれ、夕暮れに幻想的な光景を浮かび上がらせた。 端から見れば、シャボン玉遊びを興じる少女にしか見えないであろう。 ガルンはそれを見上げてから、 「確かに、こいつ見たいな掘り出し物が、他にももあるかもしれないな」 と呟いた。 宙に舞う水蝶は、太陽の光を受けて細かに色が変わる。 万華鏡が空を漂うような華やかさだ。 ガルンは微かに笑みを浮かべた。 躍起になってラインフォートを倒す必要はなかったのかもしれない。 カナンを巻き込まないで済んだのだから、それはそれで僥倖だったと思うようにした。 「黒鍵騎士団は抜ける事にしたよ。隊でごたごたがあってしばらく休業だしな。カナンの足も、プリーストレベルで直せる程度になったしな。他の仕事でも何とかなるだろう」 ガルンの言葉に、カナンの表情がパッと明るくなる。 「本当! それじゃ、昔見たいに一緒にいられるね」 「まあ、黒鍵騎士団にいた頃よりは……な」
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