第十三章 王宮の騎士 #2

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「悪趣味なことで……」 ガルンの不平を訴える口調に、アズマリアは目を細めた。 「姫様たちの御身の為だ。裏切る要素や、術や催眠で操られている奴もあぶり出せる。今いる王宮近衛騎士は全員通った道だ、諦めろ。まあ、余りに酷いトラウマを持っていれば、軽い悪夢を見る事になるがな」 アズマリアの唇が釣り上がる。 (こいつ……多分、性格悪いな) ガルンは引き攣った笑みを浮かべて、ぼんやりそう思った。 その矢先、アズマリアに顔の両端を掴まれる。 「一つ良い事を教えてやろう」 ゆっくりと瞳が朱く輝き出す。 まるで果ての無い、赤い空洞の様に見え始めた。 「貴様がどれだけ、恥知らずで、邪で、淫逸な欲望を持っていても我は気にしないぞ?」 「……なんだ。そのフォローは」 「こう言うと、表層に性癖とか出てくるアホが多いのでな」 アズマリアの口元が微妙に綻んでいる。 (……こいつ、本当に性格悪いぞ) ガルンは呆れるように、その赤い双眸に意識を持って行かれた。 深淵眼。 対象に鮮烈に刻まれた、恐怖や嫌悪の記憶を引きずり出し、その記憶から相手を幻惑する邪眼の一つ。 相手の深層心理下からも記憶を抽出する程の妖力があり、その記憶を共感する事で内容を読み取る事が可能である。
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