第十三章 王宮の騎士 #2

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「滅陽神流剣法。聖魔大戦の負の遺産か……」 アズマリアは腕を組んでから、顎に手を当てた。 十年前に起こった聖魔大戦。 真逆の東方大陸が舞台であり、事の概要は分かっていない。 この西方大陸にも魔族の侵攻はあったが、それはたいした規模では無かったとしか、アズマリアは記憶していない。 ガルンの気掛かりな点と言えば、この聖魔入り交じった不安定な状態にある。 人の身で、自然の守護者たる星狼の血を受けながらも、闇の魔剣を身につけて存在が逆方向に変質している。 聖性を持ちながら闇属性に染まった人間。 塔の戦いでの“幽体喰い”で、浚にその存在は変質している。 精霊と魔と幽境と人の狭間で漂う存在。 「苛酷な生い立ちのせいか、精神年齢も不安定だ。何かの拍子で発狂でもすれば……最悪の敵にも成り兼ねないか」 ガルンの評価を修正する。 (探って見るか?) アズマリアは滅陽神流剣法の記憶を引き出す事にした。 ガルンの存在の歪みの根源は復讐心にある。しかし、それに拍車をかけているのは明らかに滅陽神の剣のせいだ。 深淵眼で記憶を引き出すには、その特性からグラハトの死から辿るのが早い。 アズマリアはグラハトとの最後の記憶をリフレインさせる。
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