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ガルンの表情が歪む。
グラハトを巡る、どのような悪夢が展開されているかはアズマリアにしか分からない。
その時だった。
ガルンの身体から黒い陽炎の様なモノが立ち上ったのは。
「?!」
アズマリアが瞬間的に飛びのく。
吸血鬼はその不死性からか、恐怖心と言うものが酷く軽薄だ。
それが本能で動いてしまう異常事態。
アズマリアはその美貌を歪ませた。
「っう……!?」
両腕がぶらりと下がる。
アズマリアは青ざめた顔でガルンを睨み付けた。
先程の黒い陽炎はもう無い。
まるで彼の持つ魔剣の炎に酷似していたようにも思える。
「やってくれたな……少年」
吸血鬼には有り得ない現象が起こった。
冷や汗である。
常に低温である肉体は本来汗をかかない。
「……やはり危険度は飛び級のようだな」
アズマリアはそう言うと、渇いた苦笑いを浮かべた。
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