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アルシェリットの顔に憤怒の色が見える。
今度は右腕の袖を捲くり上げた。
腕にはビッシリと魔法円が描かれている。
ガルンは空中で体勢を直しながら、それを見て頬を引き攣らせた。
あんな龍をもう一体出されては、たまったモノではない。
しかし、遥か上空に飛ばされた現状では手の出しようもない。
どちらかと言うと、着地をどうするかの方が問題である。
高さは有に三十メートルはあるだろう。普通に落下したら即死か重体だ。
落下するガルンを見据えながら、アルシェリットは胸元を素手で引き裂いた。そこにも魔法円が描かれている。
(おいおい、二体も作り上げる気かよ?!)
絶句するガルン。
アルシェリットは病んだ笑みを浮かべながら、指の血を魔法円に着けようとして立ち止まった。
両腕が布に絡め捕られている。
布先は影から生えていた。
「?!」
「そこまでだ」
声は影から聞こえて来た。ゆっくりと銀髪の少女がせり上がって来る。
少女は目の端で地面に炎弾を撃ち込み、爆風で落下速度を減衰させているガルンを見てからアルシェリットに向き直った。
「これ以上は試験では済まなくなる。終了だ」
「……何時から居たんですか副団長?」アルシェリットが不機嫌そうに呟く。
「始めからだ。あいつは実力だけなら初めから王宮近衛騎士クラスだからな。間違いが起こらないように見張っていたのだよ」
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