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「その……あれじゃ。外では気軽に話し掛けるでないぞ」
「ああ、そう……だな。王族相手に気軽に話し掛ける訳にはいかないからな。公私混同はしないようにするよ」
塔で話していた、畏まらない感じが微妙に抜けない。
アベルの様付けを思い出す。確かに無礼すぎかと頭に過ぎる。
「そう言う事では無い!」
声を荒げてから、パリキスははっとなって顔を少し伏せた。
ばつが悪そうに視線を逸らす。
「その……、あれじゃ、わらわは……あまり兄様達に好かれておらんのだ。わわらと親しげにすれば、兄様達の反感を買うかもしれん」
「ああ……。なるほどね」
ガルンは顔を引き攣らせながら、明後日の方向に視線をずらす。
「それは多分、もう既に遅いなぁ……と」
半笑いのガルンを見て、パリキスは小首を傾げた。
「あの小生意気な下郎が!」
苛立ちの声に、ワイングラスが割れる音が重なる。
ザワリと周りが反応するが、第一王女、セルレイン・ハート・メルテシオンの癇癪は今に始まった事では無い。注目は直ぐに収まった。
「まあまあ、彼はここに来たばかりです。それに王宮近衛騎士団は普通の騎士とは違う。忠誠、公正、勇気、武勇、慈愛、寛容、礼節、奉仕、信念などの騎士道は求められていません」
第二王子、サランディード・アルグ・メルテシオンはやんわりと諭すが、それを第一王子、ダムスライド・グロウ・メルテシオンは鼻で笑う。
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