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「調停目前で強硬派が動いた可能性はある。戦争継続を望む第三勢力の介入も考えられる。しかし……」
グライドはそこで言葉を切った。
再び訪れそうな沈黙を、さらりとガルンが破る。
「昨日の奴らの襲撃の可能性だろ? 俺はかなり可能性が高いと判断する。奴は……一兵卒だと言っていた。本隊がいたら……二国の正規軍でも十分ヤバイ筈だ」
それは全員が気掛かりな事だろう。
冥魔族。
彼の者が名乗った別世界の異邦人。
「そう言えば、奴が使っていた魔法……いや、魔法に属さない別体系の術式。あれはまずいぜ?」
キリエが本心から溜息を漏らす。
あの術式を受けたガルンも、渋い表情を浮かべた。
領域魔法陣使いと同様の、領域規模の陣形術式。
ゾーン・エナジードレイン(領域精気吸収)と高速術式。
命を喰らう怪異召喚に、治療魔法をキャンセルする攻撃術式。
あれが一兵士の能力とは考えたくない実力だ。
「わらわから一つ伝える事がある」
パリキスはガルンに視線を移す。微妙に責めるような視線に、ガルンは意味が分からず頬を指でかいた。
「冥魔族と名乗った種族が使う術は、呪い……呪術に近いものじゃ。あれは呪詛を撃ち込む外道の法術に近い」
珍しくパリキスの瞳に怒りの色が見える。
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