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(そう言えば、そんな事を言っていたな……)
絶対の自信からか、セルレインは勝負に引き込むための餌を撒いていたのだ。
ただ、ガルンはその餌に興味がなかったが。
「まあ、いいさ。所で、あんたがパリキスに渡したサクラメントの雛形は何なんだ? 何かパリキスは口ごもっていたが」
「ああ、それはな……」
「ガルン様! パリキス様がお呼びですよ! サクラメントが完成したらしいです!」
アルセリアの言葉は唐突に投げ込まれたアベルの声が遮った。
ベランダの入口にいるアベルが手を振っていたが、アルセリアの存在にようやく気付いて畏まっている。
「……ちょうど良い。行けば分かるさ」
アルセリアは少し驚いた表情をした。
それにガルンは気がついたが、サクラメントの完成が早過ぎる為の驚きとは気付かない。
パリキスが旅路を始めてから、サクラメントを造りだして二週間もたっていない。
サクラメント製作に置いてそれは異例の速さだが、それを理解できるのは王族だけだ。
「行きたまえガルン・ヴァーミリオン君」
アルセリアに促されて、ガルンは不器用にお辞儀をして出口に向かう。
それを見ながら、アルセリアは少し目を細めた。
「あの少年は少し礼儀がなっていないな……。あれでは姉さん達に目を付けられても仕方が無いか」
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