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それを聞いて、パリキスは小さな安堵の深呼吸をした。
「なんじゃ、そのことかや。それは気にせんで良い。わらわの手元に残ったレアメタルはたいしたものが無くてな。母様の力を借りる事にしたのだ」
小さく笑う顔には一片の後悔も見当たらない。
ガルンはゆっくりと拳を握りしめた。
パリキスは母の形見を、ガルンの為に使うことに何の躊躇もなかったのだが、ガルンにはその機微は分からない。
苦汁の選択をさせた想いだけが、胸に広がる。
ガルンは奥歯をギリギリと噛み締めた。
セルレイン達への暗い怒りが込み上げる。
全ての元凶は分かりやすい形で存在しているのだ。
ガルンは口を開こうとして踏み止まった。今更、それについて語っても意味は無い。
「……これは、この勾玉は外せるのか?」
ガルンの言葉に、パリキスは首を振った。
「盾の中枢機構に接続しておる。どのみち元通りには戻らん。気にする必要はないぞ? そなたを護るために使ったのなら、母様も許してくれるはずじゃ」
「……」
沈むガルンを見て、パリキスは珍しく苦笑した。
何者にも怯まない少年が、こんなにしょげ返るのは珍しい。
路頭に迷う仔犬を連想して、パリキスは困った表情を浮かべた。
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