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しかし、ガルンにはそれがやたら頼もしく感じる。
(何をうろたえていたんだろうな、俺は)
自分の矮小さに笑いが込み上げる。
サクラメントの競い合いの当事者はパリキスだ。
これは本来、パリキスの戦いなのである。
パリキスが信じているモノを、代弁者として矢面に立つガルンが信じないのは愚の骨頂だ。
「了解だ。俺はパリキスを信じる。この盾はけして砕けない。ただ、それを証明するだけだ」
ガルンは満ち満ちた表情でパリキスにウインクする。
パリキスはその答えを満足そうに頷いた。
そして、そっと浮遊する盾に触れる。
「この盾は……そうだの成聖衛盾・天三輝(あまのみつき)と名付けよう」
「お袋さんの形見の名か。まあ、良いんじゃないか?」
ガルンも満足そうに盾を眺めた。
質素だが力強い鋼の光沢が、何者にも負けない強靭さを放ち始める。
「うむ。それではこの成聖衛盾・天三輝を、ガルン・ヴァーミリオン、そなたに与えよう!」
パリキスが指をガルンに向けると、浮遊盾は意思を持つかのように、静かにそれに沿って進む。
天三輝はガルンの前でぴたりと止まると、まるで主を見定める様に周りをゆっくりと回り始めた。
まるで飼い主を見つけたペットのようで、ガルンは思わず苦笑する。
「有り難く頂戴するよ」
サクラメントの授与。
こうして、ようやくガルンは正式に王宮近衛騎士団の仲間入りを果たしたのであった。
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