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不規則に響く振動が始めに感じた感覚だった。
耳に聞こえる、馬蹄の音と車輪の音が続く。
ゆっくりと瞼を上げると、見慣れない天井が見える。
「……」
ボケた頭を揺り動かす。
ガルンはハッとなって上体を起こした。
辺りを見回すと、白金騎士団のパラディンが鎧を脱がされて二人寝かされていた。
四腕の怪物と戦った、数少ない生存者だ。
不規則な振動と音から、自分が馬車に乗せられている事に気がつく。
「そうか……あの後、気を失っていたのか」
「起きましたかガルン様」
馬車の外から声がする。
馬車は物質運搬用を簡易的に空けたものだった。
今回は戦闘目的ではなかったので、怪我人収容用の馬車など存在しない。
荷台後ろのフォロを開けて外を見ると、馬車に追随して走る騎馬がいた。
「アベル?」
そこにいるのは自分の従騎士であった。
「何ですか、その驚きの表情は? 後から合流する事を忘れてたんですか?」
心外そうな顔には疲れが見える。
ガルンは城を出発する前日を思い出した。
合点がいき手を叩く。
「あー。そう言えばそうだったな」
「呆れますね。ガルン様が調べ物させたんじゃないですか」
「悪い、そうだった、そうだった」
ガルンは渇いた笑みを浮かべて弁解する。
旅仕度の手配、使用書類の申請、手続き、そして、調べ物と色々と小間使いの用に使ったのはガルンであった。
「俺は何でも屋ではないですからね。お忘れなく」
アベルはそう言うと小さく溜息をつく。
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