第十七章 砕けぬ想いと砕けぬ盾

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太陽が西に傾き始めた頃になると、雨雲がうっすらと空を覆い始めていた。 その雨雲のように、遠征軍の中央に建てられた仮設テント内には、じめりとした沈痛な雰囲気が流れている。 中にいるのは、遠征軍の首脳陣に位置する者達だ。 パリキスを筆頭に、王宮近衛騎士団の全員。グライド、ガルン、キリエ、スピカ、黒陽。そして、白金騎士団の小隊長、ロイヤルナイツの軍隊長である。 「……要するに遠征は中止って事だよな?」 ガルンはあっけらかんと結果を告げる。 それが何を意味しているかは全員が理解できているが、余りに突拍子も無い事に言葉を失っていた。 遠征は中止となったのだ。 それは、前日の冥魔族との戦いの被害による、自軍の都合では無い。 遠征先が無くなったからである。 すなわちアルジャヤに居るはずの二大国の軍隊が消えていたのだ。 会談場所の地理情報を得るために向かわせた先遣隊が、そこで見たのは焦土と化した大地だったのである。 そこには大規模戦闘の跡と、数々の両軍の死体の山だけが残されていた。 「どう……思う?」 スピカのボソリと呟いた言葉も、沈黙した空間にはよく響く。 「普通に考えれば、両軍の間に何かしらのいざこざが起こり……衝突した。で、しょうか?」 黒陽の言葉も歯切れが悪い。
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