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太陽が西に傾き始めた頃になると、雨雲がうっすらと空を覆い始めていた。
その雨雲のように、遠征軍の中央に建てられた仮設テント内には、じめりとした沈痛な雰囲気が流れている。
中にいるのは、遠征軍の首脳陣に位置する者達だ。
パリキスを筆頭に、王宮近衛騎士団の全員。グライド、ガルン、キリエ、スピカ、黒陽。そして、白金騎士団の小隊長、ロイヤルナイツの軍隊長である。
「……要するに遠征は中止って事だよな?」
ガルンはあっけらかんと結果を告げる。
それが何を意味しているかは全員が理解できているが、余りに突拍子も無い事に言葉を失っていた。
遠征は中止となったのだ。
それは、前日の冥魔族との戦いの被害による、自軍の都合では無い。
遠征先が無くなったからである。
すなわちアルジャヤに居るはずの二大国の軍隊が消えていたのだ。
会談場所の地理情報を得るために向かわせた先遣隊が、そこで見たのは焦土と化した大地だったのである。
そこには大規模戦闘の跡と、数々の両軍の死体の山だけが残されていた。
「どう……思う?」
スピカのボソリと呟いた言葉も、沈黙した空間にはよく響く。
「普通に考えれば、両軍の間に何かしらのいざこざが起こり……衝突した。で、しょうか?」
黒陽の言葉も歯切れが悪い。
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