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這い寄る凶鬼 #3
闇夜に森を燃やす炎だけが、風に煽られ波のようにざわめいていた。
それに混ざって、化け物の咆哮が響く。
「……あの怪物、術者が死んでも健在かよ」
キリエは地面でもがく四腕の化物を欝陶しそうに眺めた。
魔道士が居ればサンプルで持ち帰っても良いが、今の戦力では不可能に近い。
この化け物を、生きたまま持ち帰るのは難儀な行程になろう。
「滅殺あるのみか……。後、何回殺せばいいんだコレは?」
キリエがうんざりしている真横に、脇を押さえたガルンが立ち並ぶ。
「こいつは俺が焼却する。お前は下がってろ」
「ガルン……その怪我平気か? しかし、どうやって殺しきる?」
ガルンはゆっくりとダークブレイズを振りかぶる
黒炎が立ち上った。
「……?!」
異質な炎にキリエの第六感が危険だと告げる。
「ちょい時間がかかるが……。戦闘状態じゃなければ、滅ぼすのは造作も無い。俺も不死者殺しなら自信がある」
黒炎が闇より深く、黒く変色していく。
闇夜より濃い闇。
光を許さない完全な暗黒。
それが黒過ぎて、“夜が明るく感じる”違和感に
、キリエは悪寒を感じた。
まるで目の前に人の形をした魔皇がいるような恐怖感。
ダークブレイズにたぎる純黒の焔が、辺りの音を吸収したように世界を沈黙に陥れる。
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