第十九章 世界の嘆きと悪夢の始まり #2

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「確かに、奴らが必ず召喚してくる“餓鬼”は厄介だな」 グレイが言う“餓鬼”とは四腕の化物の事である。 生きている生物を捕喰し、その命を内包する怪物。 正式名称を知らないためにつけられた呼称だ。 「生きた盾……と、言うより要塞見たいだからな アレは」 ライザックが半笑いなのは仕方が無い。 餓鬼を見たものは、誰しもあの生命力の強さに絶句するはずだ。 殺しても死なない。 殺したつもりでも死なない。 その生命力だけで、戦うものに倒せないイメージを定着させる。 それに加えてあの外見だ。 相手の戦意を折るのに、これ程分かりやすい対象はいないだろう。 「前衛に物理攻撃に特化した不死の化け物。後衛から呪いを受ける強力な妖術攻撃。時間稼ぎをしても、奴らの使う枯渇結界で生命力を奪われる。今は物量で押しているが、奴らが中隊規模で現れたら損害は計り知れん」 無名の言葉に全員が頭を抱えたくなる。 黒鍵騎士団は、長引く戦争に対応して戦力を増強した。 軽犯罪者の取り立てと、傭兵の補填。それにより兵力は以前の三倍近くに膨れ上がったが、それでも冥魔族との戦いには心許ない。 長い戦いの中、黒鍵騎士団の損耗率も既に半数を越えていた。
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