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「けっ、俺様の稼ぎが減るだけだ! あんな鳥野郎ども何ていらねぇーよ」
フィン・アビスの淡々とした呟きに、ハオロンは何か気に食わないのか、不満げに言葉を吐き捨てた。
「何、どのみち現在の主任務は防衛ラインの死守だ。 あれこれ考えずに撃退だけを考えようではないか!」
気軽に笑うアカイは、豪胆なのか抜けているのかよく分からない。
ただポジティブな所はムードメイカーとしては、ありがたい所だろう。
「とりあえず、大規模作戦までは現状維持だ。二番隊、四番隊が前衛。八番隊が哨戒。十番隊は飯に。他は休息時間に割り振っていい。定期報告はこれで終わりにする」
ガルンは面倒そうに告げると、さっさとテントを後にしてしまった。
メルテシオン第一防衛ラインは高台代わりに、北西にある丘陵に見張りを立たせている。
森林に覆われたマドゥールク領内を見渡すには絶好の場所だ。
ガルンはゆっくりと丘陵に登ると、マドゥールク領地を見つめた。
精霊の眼に切り替えるが、冥魔族の姿は無い。
当面の脅威は無いと言える。
「いちいち巡回に、団長であるお前が出るのは如何かと思うぞ?」
背後からの声にガルンは苦笑いを浮かべた。
先程テントにいた人間が着いて来たのだ。
精霊の眼を使ったので、近づいて来た人間は分かっている。
無名だ。
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