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「あんた念話使い……いや、精神感応能力者……テレパシストか?」
ガルンの目付きが変わらないので、無名は少し呆れた表情を浮かべた。
ガルンにとってはメルテシオンにはグラハトの仇がいる場所でもある。
何時か戦う可能性が捨て切れない国だ。
用心に越したことは無い。
「俺のは読心術だ。顔の表情、身体の筋肉の微細な反応、動きから直感的に相手の心の中を読み解く。完全に丸聞こえのテレパスほど万能ではないよ。お前とは何年も一緒に行動しているんだ、索敵に特化した特殊な眼を持っているぐらいは流石に気付く」
無名は呆れながら手にしていたもう一本の葡萄酒を口に運ぶ。
ガルンは警戒を解いたのか、地面に魔剣と妖刀を降ろすと真横に座り込んだ。
ガルンの後方に、ふよふよ浮いている天三輝が背椅子に見えなくも無い。
「お前は迷いがなくていいな。一度決めたら、ただ前に突き進むだけに感じる。その愚直なまでの一途な感じが羨ましい」
「……? 何が言いたいのか分からない。俺にも迷いはあるさ。ただ、俺には迷っている時間が無かった気がする」
ガルンも葡萄酒を口に運ぶが、少し渋い顔をした。
やはり飲み慣れていないものは、口に合わないらしい。
ガルンと違い、無名はグビクビと葡萄酒を嚥下する。
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