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第二十章 死神の舞う地へ #2
ガルンが指揮権を無名に預けて、メルテシオンの王城に戻るという暴挙をしでかしたのは、冥魔族を退けて直ぐの事であった。
冥魔黎明衆を囮にした、冥魔族の強襲作戦にまんまと嵌まった黒鍵騎士団の損耗率は三割を越えている。
数にして九百。
せっかく増強された戦力の、三分一が失われたといっても過言では無い。
この混乱の中、団長が騎士団から抜け出すなど前代未聞の珍事と言えよう。
カナンとネーブルには猛反対されたが、暖簾に腕押し、糠に釘だ。
姫を知っている白き銀嶺とアカイだけは、訳を聞いて納得する。
他の面子は判断保留と言う結論だ。
黒鍵騎士団には数少ない召喚師にワイバーン(翼竜)を喚び出させると、ガルンはそれに乗って、転移ゲートのある街にさっさと向かってしまった。
ガルンが王城に着いたのは、それから二日後の事である。
ガルンの来訪は予想されていたのか、門戸は開いており、直通でアズマリアの元に向かう事になった。
向かうは例の地下の書庫だ。
室内でガルンを出迎えたのは、苛々を通りこして、ただ不機嫌なアズマリア以外にもう一人いた。
「よう」
と、右手を上げて、気さくに声をかけるのはグライドだ。顔中に真新しい治療痕が見える。
特に気になったのはプラプラ靡いている左袖だ。
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