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「どうしたんだ、その腕は?」
ガルンは酷く驚いた表情を浮かべた。
グライドには虚偽認識の特殊能力がある。
そうそう手傷は負わない筈だ。
「ちょっと奴らの本拠地に乗り込んだらこの様さ。連れていった王宮近衛騎士二名と、雇ったアサシンギルドの精鋭四人も連れて戻れなかった。参った参った」
グライドは軽く苦笑いで気楽に告げるが、顔には悲壮感が張り付いている。
向かった先がどのような地獄だったかは、後で報告書が上がって来るであろう。
「まず、ガルン。貴様の言いたい事は分かる。少し待て」
アズマリアの言葉に、ガルンは柳眉を逆立てた。
「ふざけるなよ! 後回しも何も無い! 何故パリキスが戦地に行く事になっている! あんたがいて何だこの有様は!」
「黙れ小僧!!」
アズマリアの声と、破砕音が地下中に響き渡った。
一撃で粉砕したテーブルから、アズマリアはゆっくりと拳を上げる。勢い余って床を貫通してしまっていた。
「我がいたら、そんな事をさせる訳がなかろうが! 我が対冥魔連合の作戦立案会議に出ている隙に、王族会議で決められてしまったのだ! まんまとダムスライドとセルレインにしてやられたわ!」
心底悔しがるアズマリアの姿を見て、ガルンはわざとらしく大きく舌打ちする。
ほくそ笑む第一王子と王女の顔が、意図もたやすく浮かぶ。
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